医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

術後補助化学療法とは

術後補助化学療法とは?

R0手術(手術で完全に治癒できたという意味の手術)が行われた治癒切除例に対して、再発を抑制し、予後を改善する目的で術後に実施される全身薬物療法のことをいいます。 

要は手術で治ったはずだが、目に見えない、CTやMRIなどでも写らない微小な癌を薬で小さいうちに叩いておこうという考え方に基づいて手術後に実施される抗がん剤治療です。

 取り出された錠剤

大腸がんの術後補助化学療法

適応:最終ステージⅢとhigh riskのステージⅡの大腸がん

  1. オキサリプラチン併用:ゼロックス(ゼローダ+オキサリプラチン)もしくは FOLFOX(5-FU+オキサリプラチン)の2種類
  2. フッ化ピリミジン単独療法:ゼローダ単剤、5ーFU単剤、UFT、S-1の4種類

    *1

     大腸がんは計6種類のメニューがありますが、実際は上記2パターンに分けられます。

胃がんの術後補助化学療法

適応:最終ステージⅢとhigh riskのステージⅡの胃がん

  1. S-1の内服1年間
  2. ゼロックス療法半年間*2
  3. S-1+ドセタキセル1年間

3のS-1+ドセタキセルに関しては2018年のガイドラインに掲載されていないですが、

ステージⅢの胃がん術後はS-1よりもS-1+ドセタキセルが有意によかったという最新の論文があり、2018年米国臨床主要学会で名古屋大学が発表し、次回のガイドラインは書き換わる予定となっています。

このように、少しずつですが、より良い治療の開発がいまも進んでいます。

膵がんの術後補助化学療法
  1. S-1の内服半年間
  2. GEM(ジェムザール)半年間
  3. GEM+ゼローダ
  4. modified FOLFIRINOX*3

3.4.に関しては、弱い推奨度となっています。

 

いずれの治療も少しずつではありますが、新しい組み合わせや新薬の開発などがあり、より良い治療が実施されるようになっています。

*1:大腸癌治療ガイドライン2019年版

*2:胃癌治療ガイドライン2018年版

*3:膵癌治療ガイドライン2019年版