医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

崩れつつある外科医の徒弟制度

外科医は内科医と比較して職人気質の様なものが重視されやすい。

なんとなくイメージがつきやすいと思うし、実際見渡しても体育会出身の医師が多い印象である。

外科医のイメージといえば元気はつらつといったイメージ

内科医のイメージは物静かで寡黙、知的なイメージ

 

医師の中でよく言われる外科医はなんでも出来るが、何も知らない。

内科医はなんでも知っているが、何もできない。

などと言われるのは医師なら一度は聞いたことがあるかもしれない。

 

とにかく外科医は手術に関しては本で勉強して知識を蓄えるというよりは、実際に手術に入って師匠となる指導医に直接手術のやり方を教えてもらうしか成長する場がなかった。指導医と性格が合わなかったり、可愛がってもらえなかったりすると成長の機会は失われる。なので指導医の機嫌はとる必要があったし、年功序列を重んじる必要があった。当然、指導医の言うことがいつも正しいわけではないが、なかなかtrainee(指導を受ける立場)は指導医の間違いや考え方の違いを主張できないことが多かった。

しかし、そんな外科医の縦社会も徐々に崩れつつある。

 

最近、日本の医療現場以外の社会でも年功序列や終身雇用制が崩壊しつつある様である。

 

堀江氏はよく本でも書いてある様に、テクノロジーの台頭、特にスマホの普及である。

上記の本でも書いてあることだが、全ての情報が限定的に共有されていたため、時代からずれたシステムが疑問視されずに維持されたいた。

スマホの普及で情報が共有される様になったし、個人の力でスマホ一つでビジネスを始めることが出来る時代になったので、個人の力が強くなり、会社に頼る必要がなくなったことが大きな要因だろう。

 

外科医の世界でもテクノロジーの台頭は腹腔鏡の普及である。

腹腔鏡手術のイラスト

腹腔鏡手術により、手術が動画で保存される。仮に手術に入れなくても後で見返すこともできる。また、画面に映っていることが手術の全てで、視野を手術に入っている人全員で共有しているので意思統一がしやすい。など外科医にとってもメリットが大きいです。

手術の動画を保存して何度も復習できるのでどこをどんな風に切開するか。左手はどんな風に使うか。あの血管は何なのか?手術動画は何回見ても勉強になります。

 

また、同じ施設の指導医だけでなく、全国のトップナイフの動画も公開されているので、若手でもセンスのある人はすぐに手術が上手になります。多少若くても、そこらの指導医より上手な若手も実は結構いたりします。

この様な時代の流れは腹腔鏡というテクノロジーによりもたらされたと言えるし、個々の能力がより重視される様な時代になったとも言えると思います。

 

今後、ダビンチの導入など、手術もテクノロジーの変化により様変わりし、外科医同士の付き合い方すら変化していくかもしれません。