医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

動物に噛まれたら

動物に手や足を噛まれて救急外来や外科外来に来る人は非常に多いです。

何科を受診したらいいの?と思う方も多いかと思いますが、一般病院なら外科に回されると思いますが、開業医ならば内科でも対応してもらえると思います。

動物には犬や猫の場合もあるし、珍しい動物の場合もあります。人の場合もあります。

ちなみに犬の場合よりも、猫やヒトに噛まれた方が重症化することが多いです。

動物に噛まれた時の対処法を解説します。

「たそがれわんこ」の写真

おそらく病院に行けばなんとかなると思われるかもしれませんが、病院でやる前に最も重要なことがあります。

洗浄

何よりもまず、洗浄が大切です。水でちょろちょろ洗うとか、そういうレベルではなく、とにかく大量の水で洗い流すのが最も重要です。

病院に来る前に洗浄して下さい。来院して、病院で最初にやるのは洗浄なので、それならば病院に来る前に洗っておく方が効果も高いしすぐに治療に移ることができます。

 

噛まれた動物をスマホで撮影

可能なら撮影しておくと良いでしょう。担当した医師が動物に詳しいかどうかは分かりませんし、意味があるかどうかは別にして可能なら写真に残しておくといいと思います。

 

病院での治療

病院での治療は

  1. 抗生物質の治療
  2. 破傷風予防

破傷風予防のワクチンは受傷直後・1ヶ月後・6ヶ月後の3回接種を行います。

 

また、注意点ですがヒトに噛まれてしまった場合、放っておくと1週間ぐらいで膿んでくることがあります。原因は歯周病菌が多いので、それに合わせた抗生物質が処方されます。また、ウイルス肝炎HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することもあるので、噛まれたら受診するようにしましょう。

サイラムザ 抗がん剤

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胃がんや大腸がん、肝細胞癌などに投与されるサイラムザ(ラムシルマブ)の解説記事を書きます。

サイラムザは分子標的治療薬の一つで、血管新生を抑制する薬です。

がん細胞の増殖・転移には、血液からたくさんの栄養や酸素を取り込むことが必要です。その際に、元々の体の中にある血管を自分自身へ引き込み、新しい血管を作ります。こちらが血管新生と呼ばれる現象です。サイラムザはこの血管新生を抑制します。

作用機序が似ているものは、色々な癌種に使われているアバスチン(ベバシズマブ)があります。

適応
  • 治癒切除不能な進行・再発胃癌
  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能肝細胞癌

以上のようながんに適応があります。

胃がん

胃がんの場合は1st:フッ化ピリミジン(S-1やカペシタビン)+プラチナ製剤(シスプラチンやオキサリプラチン )

2nd:パクリタキセルサイラムザ

 

 大腸がん

2nd ライン以降にFOLFIRI療法に併用できる分子標的治療薬になります。

FOLFIRI+サイラムザになります。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

肝臓がん

www.jsh.or.jp

 

など、消化器癌では上記のような方法でサイラムザ(ラムシルマブ)が投与されます。

疲労感や下痢、嘔気、食欲不振などの通常の有害事象に加えて、サイラムザに特有の有害事象としては高血圧や鼻出血などの血管系のトラブルがあります。

そのほかには消化管穿孔などです。

現状では1stラインに投与される機会は多くはありませんが、2ndライン以降に投与される薬になります。

分子標的治療薬 アバスチン


分子標的治療薬の作用機序

がん細胞と正常細胞の違い(がん特異的機構)を標的として抗腫瘍効果を示す。

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分子標的治療薬の分類 
分子標的治療薬(大腸)

小分子化合物

マルチキナーゼ阻害剤

抗体薬

血管阻害剤

 

抗上皮成長因子受容体抗体 

大腸がんで用いられる分子標的治療薬は6種類。

胃がんで用いられるのは2種類です。

アバスチン(Bmab/ bevacizumab)

 ここでは使用機会が多い血管阻害剤のアバスチンの関する記事を書きます。

下に中外製薬の公式HPのリンクを貼っておきます。

pat.chugai-pharm.jp

作用機序

がん組織の血管新生を阻害することでがんを直接攻撃する作用がある。

適応外、慎重投与となる場合
  • 喀血の既往
  • 転移性脳腫瘍
  • 胃潰瘍など(出血のリスク)
  • 大手術の1ヶ月以内(出血のリスク)
  • 血栓傾向
  • 抗凝固療法中
  • 動脈血栓、静脈血栓の既往

などがある場合は慎重な管理が要求されます。

 

副作用
  • 高血圧
  • 蛋白尿
  • 消化管穿孔
  • 動脈血栓、静脈血栓

上記は我々が普段特に注意しているものです。

頻度が多いもの、発症したら重篤になりうるものは要注意です。消化管穿孔を起こした場合は手術となる可能性が高いため起きてしまった場合は要注意です。

と言いつつ、吐き気や痺れ、皮膚障害などの副作用はあまり報告されていないので、どちらかというと自覚症状は少ないです。検査をしない限り分からない副作用が多いので、何もなければ患者さんは苦痛なく投与されている方も多いです。

 

治療スケジュール

2週間に1回投与と3週間に1回投与の2通りの投与法があります。

併用している化学療法によってどちらの投与方法かを決定します。

 

参考にできる信頼のおけるサイトのリンクを貼っておきます。

ganjoho.jp

医者が教える正しい病院のかかり方

医者が教える正しい病院のかかり方

著者

専門は消化器外科医。

2010年京大医学部卒業。年齢は公表されていないが、現役か一浪ぐらいなら30半ばぐらいになります。京大。。。

2017年ごろから「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営して3年で1000万PV越え。

他の著書として以下の本も出版している。 

こんな人が読むべきだ
  1. 普段病院やクリニックにかかっている人
  2. 近々病院を受信しようとしている人
  3. がんと診断されてしまったがどうしたら良いか
  4. どんな風に病院を選べば良いか分からない人
内容
医療情報の集め方

ネットに怪しい、詐欺まがいの医療情報が錯綜しており、何を信じていいか一般の人には分かりにくい。また、検索エンジンで上位だからといっても、広告が入っていたりして、検索の一番上に来るからといって信じられるものではない。

がんの関連情報は国立がん研究センターのがん情報

https://ganjoho.jp/public/index.html

がいい。消化器に関する情報は日本消化器病学会のHPの[患者さんとご家族のためのガイド]

http://www.jsge.or.jp/guideline/disease/

がいいです。

どちらも公的機関のサイトなので間違いは少ないし、自分でサイトを探すよりよっぽどいいでしょう。

 

 

患者さんが知らなくて誤解しているんだろうなと我々が感じていることや、伝えたい事を患者目線から正確に伝えている。

  • 医者との関係性に悩んでいる。
  • どんな病院を選べば良いか?
  • 病院を変えたいけど、医師に気を遣ってしまってなかなか言い出しにくい

私もなんとなく思っていた答えとこの本の内容は一致している。というより、非常に標準的な考え方がきちんと正確に誠実に言語化している。筆者の山本先生の誠実さと知性の高さがこの本から伝わってくる。

非常に複雑な医療情や医療用語を正確に解説している。筆者の試行錯誤がなんとなく伝わってくる。これだけ専門外分野も含めて医療用語を正確に解説されているので、色々な医師も目を通しただろう。ゴーストライターはついていないかもしれない。

この本を読めば、なぜ医者に質問しても複雑な答えが返ってきて混乱すると感じている人がいるとしたら、理由がはっきりするかもしれません。

 

1点だけ個人的に気になったのは、特に前半部分であるが、非常に文章が固くて読んでいてしんどくなる。イラストがなくて活字ばかりということと、医療情報という、そもそも誤解を与えたら患者さんの不利益になるため安易な比喩が使えず、正確に伝える必要があるからだと思う。なので、ある程度複雑になるのは仕方ない。

私は本が好きで活字には慣れているし、医療情報は日頃から触れているが、それでも読んでいて多少疲れた。

なので、全てを正確に理解するのは困難だと思うし、その必要はない。自分に関係のある分野だけでも読んでみると非常に参考になる。

 

少なくとも嘘はないし、非常に標準的なことが正確に書かれているという点で、医療従事者でない人にも強くおすすめできる一冊だと思う。

免疫チェックポイント阻害薬

2018年に本庶佑(ほんじょたすく)博士がノーベル賞を受賞したことでも知られる分野の成果である免疫チェックポイント阻害薬に関して書きます。

最近、癌の治療薬として急速に広まった治療薬になりますが、今までの抗がん剤とは作用機序が異なります。

これまでの抗がん剤はがん細胞を直接標的としていましたが、免疫療法は、免疫細胞の働きによりがんを抑制する治療になります。

消化器外科領域(胃がんや大腸がん)で用いられる抗PD-1抗体薬であるニボルマブやキイトルーダはがん免疫逃避機構を解除し、免疫細胞ががんを排除できるようにする治療になります。

従来の抗がん剤と作用機序が異なるので、いくつか異なった特性があります。

 コードが書かれたモニター

1.長期奏功、遷延性の効果発現

治療効果が認められた症例では奏功期間の長期持続を認め、場合によっては治療終了後も効果が持続する。

2. Pseudo-progression

Pseudo-progression 直訳をすると偽増大(このような日本語はない)。治療開始後に一過性の腫瘍増大を認めることがあります。

理由ははっきりとはしていないのですが、免疫細胞が腫瘍へ浸潤するためと言われていたり、免疫応答の開始に時間を要するためその時間差を見ているため、と言われたりする。

重要な点は、画像上腫瘍が増大して見える可能性があるので治療が中止されることがあるようです。

3.hyperprogression disease

免疫チェックポイント阻害薬開始後に急速に腫瘍増大が報告されています。

現時点ではどのような症例でhyperprogression diseaseになるかの予測因子は現在研究中になります。

 

現在、注目されている免疫チェックポイント阻害剤ですが、まだまだ発展途上です。今後もさらにいい薬、さらにいい投与計画が実装されていくことと思います。

 

大腸がんに関してはMSI-H検査を行い、適応となれば大腸がんでも免疫チェックポイント阻害薬を使用できますが、その割合は5%程度と言われています。

それほど投与機会が多いわけではありませんが、場合によってはこれまでになかった治療効果が得られるかもしれません。

若手外科医が必読の医学書6選

試験を受けるわけではないから問題集は必要ないと思われるかもしれませんが、知っておかないといけないが、知らなかったことが必ずあるはずです。

日常診療でたまたま接することがなかった重要事項が必ずあるはず。

問題集と思わずに、知っておくべきこととして読んでみるといいでしょう。

 

しかも、ほとんどの外科医は専門医試験を受けると思うので早くから準備するという意味でも早めに読むことをおすすめします。

ちなみの今年の外科専門医試験は試験日が延期された様です。

 

近年は消化器外科の症例で一番多いのは腹腔鏡での大腸がん手術(ラパ腸)の習得が若手の必須項目だと思われます。技術認定の取得を意識したラパ腸の解説書で個人的な一押しは本書です。

 

わざわざ取り上げる必要もないぐらい有名な一冊。先輩が絶対に持っているのでわざわざ買わなくても良い本とも言える。それぐらい有名な本だが、ラパロ全盛の時代になっても非常に解剖の理解が深まる一冊なので、先輩に借りるなり、買うなりしてとにかく一読しておくことをお勧めする。

術者の立ち位置からの景色をイラストにしている、非常に実践的な外科手術の入門書です。

若干古い本であるが、こちらも購入をお勧めする。特に消化器外科医にお勧めの部分は肝臓の細かい解剖の解説部分だし、呼吸器外科医にお勧めの部分は肺の区域の解剖の解説。

コンパクトにまとめられており、長年重宝する一冊である。

 

外科医でも少しは内視鏡の知識が必要でしょう。外科レベルで最低限知っておかないといけないことを非常に詳しく書いている。分厚い教科書で、マニアックな画像所見などは割愛されており、癌に関する詳細な考察が物語形式で書かれており、読みやすく勉強になるし、実践的な一冊である。

 

化学療法の有害事象対策が非常に詳しく書かれている一冊。

化学療法はすぐに新しい薬が出るので、できるだけ新しいものを購入する必要があるし、度々書い直す必要がある。本書は非常に実践的で即使える知識が書かれているので非常におすすめである。

化学療法のFOLFIRIとは?

大腸がんの化学療法の基本薬剤を系統、作用の点から以下の3種類に分類されます。

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大腸がん領域でもっとも多く使われている化学療法はFOLFOXやXELOXかと思います。

FOLFOX、XELOXに関しては以前の記事もあります。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

FOLFOXやXELOXは、要するにフッ化ピリミジン系の薬剤とオキサリプラチンを併用した治療になります。FOLFIRIは5ーFUの点滴+イリノテカン(商品名:カンプト)になります。

FOLFOXの方がよく使われている理由は術後補助療法には使われないことなど、色々あるかと思いますが、治療効果が劣るということではありません。

術後補助化学療法とは?に関しても記事を書いています。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

FOLFIRIはFOLFOXと同列の1st lineの治療として位置付けられています。*1

 

ですので、FOLFOXやXELOXをなんらかの理由で2nd lineに移るとしてもFOLFIRIの治療効果はそれなりに期待できるはずです。

FOLFIRIの主な注意点

脱毛

抗がん剤で髪の毛が抜けるイメージがあるかもしれませんが、まさにそのイメージです。

対人的な仕事をされている方はなかなか受け入れられないでしょう。

これはイリノテカンによるものと言われています。イリノテカンの投与が終われば脱毛が止まり、きちんと髪の毛が生えてくるのですが、抵抗がある気持ちは非常によく分かります。

下痢 

 こちらもイリノテカンによるもの。特有の下痢が起こることがそれなりの頻度であります。ロペラミドなどの下痢止めを投与することでコントロールすることが多いです。患者さん自身もきちんと水分(もちろんスポーツドリンクでも良い)をとっておくことが重要である。

遺伝子検査を受ける

UGT1A1という遺伝子多型があります。遺伝子多型は非常に説明が煩雑ですが、アルコールに強い人と弱い人がいるのをイメージされるとわかりやすいでしょう。イリノテカンに非常に有害事象を来たしやすい人がいます。

血液検査で検査できます。検査自体は必須ではないので医師が提案しない場合も十分にありえます。気を遣うかもしれませんが、イリノテカンの治療を受ける人はUGT1A1の検査を希望する旨を担当医に伝えると良いと思います。

患者さん自身も医師に丸投げするのではなく、自分の命と思って伝えると良いでしょう。

*1:大腸癌治療ガイドライン2019