医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

遺伝性大腸癌

遺伝性大腸癌は大腸癌の中でも一部になりますが、それなりに多く、若年発症になる傾向があります。

先日の笑ってこらえての番組で取り上げられた22歳の大腸癌になった方の話があったので、若年性の大腸癌に関して記載させて頂きます。

 

大腸癌には遺伝性大腸癌と言われるタイプがあります。

主な出典は、医師用の遺伝性大腸癌ガイドラインとします。

遺伝性胃癌などはあまり多くはないです。

先日の笑ってこらえての22歳の大腸癌を患った花嫁の方がこの疾患であったかどうかは分かりません。

 

遺伝性大腸癌というものを知らない人がほとんどであること、意外に多いという背景から記事を書きます。

主な遺伝性大腸癌としては2つがメインに挙げられます。

  1. 家族性大腸腺腫症 (familial adenomatous polyposis :FAP)
  2. リンチ症候群 (Lynch syndrome)

の2つです。

 

家族性大腸腺腫症 (FAP)

  • 日本では大腸癌の17400人に1人の割合(それほど多い疾患ではありません)
  • 放置すれば40歳代で50%、60歳代まで放置すればほぼ100%が大腸癌になると言われるほど深刻な遺伝性疾患です。
  • 20歳で大腸全摘を予防的に行うことが推奨されています。

 

リンチ症候群

  • 日本では全大腸癌の2−4%を占めると推定されています。

それなりの施設では大腸癌の手術を200例以上施行している症例がたくさんありますので、そういう施設でも年間7、8件はリンチ症候群と言われています。

各施設で年間10人ほどいる疾患となると、本当によくある病気と言えます。

それぐらい遺伝性大腸癌は多いのです。

  • スクリーニングの項目

改定ベセスダガイドライン2004が簡便なのです。

  1. 50歳未満で診断された大腸癌
  2. 年齢に関わりなく、同時性あるいは異時性大腸癌あるいはその他のリンチ症候群関連腫瘍がある。
  3. 60歳未満で診断されたMSI-Hの組織学的所見を有する大腸癌
  4. 第一度近親者が1人以上リンチ症候群関連腫瘍に罹患しており、そのうち1つは50歳未満で診断された大腸癌。
  5. 年齢にかかわりなく、第一度あるいは第二度近親者の2人以上がリンチ症候群関連主要と診断されている患者の大腸癌

いろいろ書かれていますが、50歳以下の大腸癌の場合は遺伝性の可能性があるということです。血縁者もよく調べる方が良いと思います。

  • 治療は普通の大腸癌と同じ様にされていることが多い。

以上になります。

遺伝性なので、どうしようもないではないか、と思われるかもしれません。

しかしながら、遺伝性だろうがなんだろうが、早期に発見すれば治ることが多いです。

珍しいFAPに関しては、早めの手術が必要なのはある程度仕方ないと思います。

リンチ症候群対策

血縁者に大腸癌の人がいるとして、ベセスダ基準が当てはまる人は大腸カメラを受けてみるといいでしょう。

たとえ大腸癌になりやすかったとしても、大腸癌は早期に発見すれば、ほとんどが治癒できます。

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手術もなく、カメラで切除することもできる場合もあるので、怖がる前に大腸カメラを受けることをオススメします。