医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

免疫チェックポイント阻害薬

2018年に本庶佑(ほんじょたすく)博士がノーベル賞を受賞したことでも知られる分野の成果である免疫チェックポイント阻害薬に関して書きます。

最近、癌の治療薬として急速に広まった治療薬になりますが、今までの抗がん剤とは作用機序が異なります。

これまでの抗がん剤はがん細胞を直接標的としていましたが、免疫療法は、免疫細胞の働きによりがんを抑制する治療になります。

消化器外科領域(胃がんや大腸がん)で用いられる抗PD-1抗体薬であるニボルマブやキイトルーダはがん免疫逃避機構を解除し、免疫細胞ががんを排除できるようにする治療になります。

従来の抗がん剤と作用機序が異なるので、いくつか異なった特性があります。

 コードが書かれたモニター

1.長期奏功、遷延性の効果発現

治療効果が認められた症例では奏功期間の長期持続を認め、場合によっては治療終了後も効果が持続する。

2. Pseudo-progression

Pseudo-progression 直訳をすると偽増大(このような日本語はない)。治療開始後に一過性の腫瘍増大を認めることがあります。

理由ははっきりとはしていないのですが、免疫細胞が腫瘍へ浸潤するためと言われていたり、免疫応答の開始に時間を要するためその時間差を見ているため、と言われたりする。

重要な点は、画像上腫瘍が増大して見える可能性があるので治療が中止されることがあるようです。

3.hyperprogression disease

免疫チェックポイント阻害薬開始後に急速に腫瘍増大が報告されています。

現時点ではどのような症例でhyperprogression diseaseになるかの予測因子は現在研究中になります。

 

現在、注目されている免疫チェックポイント阻害剤ですが、まだまだ発展途上です。今後もさらにいい薬、さらにいい投与計画が実装されていくことと思います。

 

大腸がんに関してはMSI-H検査を行い、適応となれば大腸がんでも免疫チェックポイント阻害薬を使用できますが、その割合は5%程度と言われています。

それほど投与機会が多いわけではありませんが、場合によってはこれまでになかった治療効果が得られるかもしれません。

若手外科医が必読の医学書6選

試験を受けるわけではないから問題集は必要ないと思われるかもしれませんが、知っておかないといけないが、知らなかったことが必ずあるはずです。

日常診療でたまたま接することがなかった重要事項が必ずあるはず。

問題集と思わずに、知っておくべきこととして読んでみるといいでしょう。

 

しかも、ほとんどの外科医は専門医試験を受けると思うので早くから準備するという意味でも早めに読むことをおすすめします。

ちなみの今年の外科専門医試験は試験日が延期された様です。

 

近年は消化器外科の症例で一番多いのは腹腔鏡での大腸がん手術(ラパ腸)の習得が若手の必須項目だと思われます。技術認定の取得を意識したラパ腸の解説書で個人的な一押しは本書です。

 

わざわざ取り上げる必要もないぐらい有名な一冊。先輩が絶対に持っているのでわざわざ買わなくても良い本とも言える。それぐらい有名な本だが、ラパロ全盛の時代になっても非常に解剖の理解が深まる一冊なので、先輩に借りるなり、買うなりしてとにかく一読しておくことをお勧めする。

術者の立ち位置からの景色をイラストにしている、非常に実践的な外科手術の入門書です。

若干古い本であるが、こちらも購入をお勧めする。特に消化器外科医にお勧めの部分は肝臓の細かい解剖の解説部分だし、呼吸器外科医にお勧めの部分は肺の区域の解剖の解説。

コンパクトにまとめられており、長年重宝する一冊である。

 

外科医でも少しは内視鏡の知識が必要でしょう。外科レベルで最低限知っておかないといけないことを非常に詳しく書いている。分厚い教科書で、マニアックな画像所見などは割愛されており、癌に関する詳細な考察が物語形式で書かれており、読みやすく勉強になるし、実践的な一冊である。

 

化学療法の有害事象対策が非常に詳しく書かれている一冊。

化学療法はすぐに新しい薬が出るので、できるだけ新しいものを購入する必要があるし、度々書い直す必要がある。本書は非常に実践的で即使える知識が書かれているので非常におすすめである。

化学療法のFOLFIRIとは?

大腸がんの化学療法の基本薬剤を系統、作用の点から以下の3種類に分類されます。

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大腸がん領域でもっとも多く使われている化学療法はFOLFOXやXELOXかと思います。

FOLFOX、XELOXに関しては以前の記事もあります。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

FOLFOXやXELOXは、要するにフッ化ピリミジン系の薬剤とオキサリプラチンを併用した治療になります。FOLFIRIは5ーFUの点滴+イリノテカン(商品名:カンプト)になります。

FOLFOXの方がよく使われている理由は術後補助療法には使われないことなど、色々あるかと思いますが、治療効果が劣るということではありません。

術後補助化学療法とは?に関しても記事を書いています。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

FOLFIRIはFOLFOXと同列の1st lineの治療として位置付けられています。*1

 

ですので、FOLFOXやXELOXをなんらかの理由で2nd lineに移るとしてもFOLFIRIの治療効果はそれなりに期待できるはずです。

FOLFIRIの主な注意点

脱毛

抗がん剤で髪の毛が抜けるイメージがあるかもしれませんが、まさにそのイメージです。

対人的な仕事をされている方はなかなか受け入れられないでしょう。

これはイリノテカンによるものと言われています。イリノテカンの投与が終われば脱毛が止まり、きちんと髪の毛が生えてくるのですが、抵抗がある気持ちは非常によく分かります。

下痢 

 こちらもイリノテカンによるもの。特有の下痢が起こることがそれなりの頻度であります。ロペラミドなどの下痢止めを投与することでコントロールすることが多いです。患者さん自身もきちんと水分(もちろんスポーツドリンクでも良い)をとっておくことが重要である。

遺伝子検査を受ける

UGT1A1という遺伝子多型があります。遺伝子多型は非常に説明が煩雑ですが、アルコールに強い人と弱い人がいるのをイメージされるとわかりやすいでしょう。イリノテカンに非常に有害事象を来たしやすい人がいます。

血液検査で検査できます。検査自体は必須ではないので医師が提案しない場合も十分にありえます。気を遣うかもしれませんが、イリノテカンの治療を受ける人はUGT1A1の検査を希望する旨を担当医に伝えると良いと思います。

患者さん自身も医師に丸投げするのではなく、自分の命と思って伝えると良いでしょう。

*1:大腸癌治療ガイドライン2019

【センター】【現代文】センター試験(秘)裏ワザ大全 国語

オススメ度:???

著者:津田秀樹

対象:センター現代文が安定しない受験生

本書の特徴

選択肢だけで、本文を読まなくてもセンター現代文は正解を導くことができる!という内容を唄った本でまさに邪道感がすごい本である。

要は問題を作っている側からどの様に不正解の選択肢を作るかをよく考察した上で選択肢を吟味して正解を導くという本。

よく言われる現代文の不正解の手法として

  • 正解と逆
  • 内容の誇張(独特の表現がある)
  • 本文に書いていないが、一見正しいことを言う

など、よく知られているものはある。

 

実体験

センター試験の本番を本文読まずに解き進める度胸はなかったので、私は受験生の頃はこの本を読まなかった。

しかし、選択肢を吟味する上でテクニックとして知っておいて良かったかもしれない。

本文をしっかり理解して王道の解き方の方がいいだろうと考えて、裏ワザ大全を読まなかった。変なテクニックを身につけて、正解から遠ざかるのも怖いと考えた。

結果、センター現代文は大失敗であった。

もしかしたら読んでおけば、不正解を選ばずに済んだかもしれない。

受験というのは、みんなどこかしら後悔はあるものだと思う。

読むかどうか?

読まずに失敗するのと読んで失敗する?

チャレンジして失敗する?チャレンジせずに諦める。

ダメなのが分かってて告白する?しない?

 

人生には色々な後悔があると思う。

どちらが後悔が大きいだろうか?

分からないが、長い時間経って、やってダメな後悔よりも、やらなかった後悔の方が後悔の度合いの方が大きいのではないだろうか。

何かとやらなかった後悔というのは後をひくものである。

 

私はセンター試験の現代文で失敗した(点数は忘れたが、確かに失敗した)。

裏ワザの本を読まなかった。その時は、裏ワザの本、読めばよかった!!と後悔したのをよく覚えている。結果が違ったかどうかは定かではないが、読んで失敗しても、後悔はなかった様に思う。色々考えた上で、読むという選択をして、その結果センター試験の選択肢に惑わされた挙句に不正解を選んだとしても、スパッと割り切れた様に思う。

ちなみに、この本の様に実際に選択肢だけで正解を導くことができるぐらいに選択肢を吟味できる人は、本文を読んで解答しても正解にたどり着ける様な読解力のある人だろうと考えている。要はそういうことなので、選択肢を吟味する時の考察のアプローチの一つぐらいに思って読んでみてはいかがだろう。

毎年の様に出版されていて、10年以上の歴史があることから、同じ様な悩みを持つ受験生はまだまだ存在するだろう。

一生を左右するかもしれないセンター試験で本文を読まないで解答する度胸のある人は滅多にいない気もするが、選択肢に惑わされるなら一読しても良いかもしれない。

後悔の念を込めて、本書を取り上げることにした。

健康の結論 堀江貴文 大腸がん

以前のホリエモンの執筆した書籍、健康の結論に関する記事を書きます。

この本は2年前の本であるが、すごく良い本なので解説していきたい。

 

 

「大腸がんで毎年5万人が亡くなる」

 

現在の日本の死因の第一位はがんです。

その中でも1位は肺がんですが、2位が大腸がんになります。

そして、大腸がん死亡数は年々著しく増加しています。*1

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大腸がんが増加傾向にある理由は、日本社会の高齢化や食事の欧米化など様々なことが言われていますが、根本的な原因は一つではなく、様々な要因が重なって起きていると考えられます。

「検査で早期発見できれば90%以上助かる」

この90%が実際のデータに基づいているかどうかは不明であるが、私個人の意見としては、大腸カメラを2、3年に1回程度受けていれば98%ぐらい大腸がんを予防できると思います。あくまで個人的な意見で客観的なデータはありませんが、肌感覚として、大腸カメラでほぼ完全に大腸がんを予防できると思います。

大腸カメラでほぼ完全に大腸がんを予防できると考える理由は大腸がんの発生過程にあります。

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大腸がんはいきなり大腸がんとして現れるケースは少ないです。ほとんどはadenoma-carcinoma sequence (腺腫ー癌連関)と呼ばれる発生過程を辿ります。

大腸腺腫の状態から数年経過すると、一部が大腸がんになります。その大腸がんが発育して進行して行きます。

なので、数年に1度大腸カメラを受けていれば、adenoma(大腸腺腫でありポリープ)の段階で切除することができます。腺腫ならば癌ではないので、きちんと切除すればそれで治療完了です。

 

「大腸ポリープは1個も100個も取る値段は同じ」

これは日本の保険診療のシステムに基づいているのですが、切除した個数で値段が決まるわけではありません。1個と0個では数千円ほど自己負担が変わると思いますが、1個取ればあとはそれほど値段は上がりません。ポリープを切除しても1万円代で大腸カメラを受けることができると思います。

「大腸カメラは眠っている間に終わる」

麻酔を使うか否かは好みにもよりますが、少し眠くなってうとうとする薬(鎮静剤)を使用すれば眠っている間に終わります。

前処置も検査中も技術や内視鏡自体の機械が改良されており、それほど苦痛なく大腸カメラを受けることができます。

私も大腸カメラを受けましたが、その時の感想を書いています。

doctor-dokusyo.hatenablog.com

 

「40歳を過ぎれば毎年1回便潜血検査を」

実際大腸カメラを数年に1回受ければ問題ないですが、少し抵抗がある人はいるかもしれません。結局どうしたら良いのか?

答えはズバリ40歳を過ぎれば毎年1回便潜血検査を行い、陽性(便に血が混じる)ならば大腸カメラを受ける。これでほぼ大腸がんは完璧に防げると思います。

*1:人口動態統計

術後補助化学療法とは

術後補助化学療法とは?

R0手術(手術で完全に治癒できたという意味の手術)が行われた治癒切除例に対して、再発を抑制し、予後を改善する目的で術後に実施される全身薬物療法のことをいいます。 

要は手術で治ったはずだが、目に見えない、CTやMRIなどでも写らない微小な癌を薬で小さいうちに叩いておこうという考え方に基づいて手術後に実施される抗がん剤治療です。

 取り出された錠剤

大腸がんの術後補助化学療法

適応:最終ステージⅢとhigh riskのステージⅡの大腸がん

  1. オキサリプラチン併用:ゼロックス(ゼローダ+オキサリプラチン)もしくは FOLFOX(5-FU+オキサリプラチン)の2種類
  2. フッ化ピリミジン単独療法:ゼローダ単剤、5ーFU単剤、UFT、S-1の4種類

    *1

     大腸がんは計6種類のメニューがありますが、実際は上記2パターンに分けられます。

胃がんの術後補助化学療法

適応:最終ステージⅢとhigh riskのステージⅡの胃がん

  1. S-1の内服1年間
  2. ゼロックス療法半年間*2
  3. S-1+ドセタキセル1年間

3のS-1+ドセタキセルに関しては2018年のガイドラインに掲載されていないですが、

ステージⅢの胃がん術後はS-1よりもS-1+ドセタキセルが有意によかったという最新の論文があり、2018年米国臨床主要学会で名古屋大学が発表し、次回のガイドラインは書き換わる予定となっています。

このように、少しずつですが、より良い治療の開発がいまも進んでいます。

膵がんの術後補助化学療法
  1. S-1の内服半年間
  2. GEM(ジェムザール)半年間
  3. GEM+ゼローダ
  4. modified FOLFIRINOX*3

3.4.に関しては、弱い推奨度となっています。

 

いずれの治療も少しずつではありますが、新しい組み合わせや新薬の開発などがあり、より良い治療が実施されるようになっています。

*1:大腸癌治療ガイドライン2019年版

*2:胃癌治療ガイドライン2018年版

*3:膵癌治療ガイドライン2019年版

受験するなら東大以外あり得ない?

受験するなら東大以外あり得ない?

ホリエモンの本「スマホ人生戦略」に堂々とこのような題名が掲げられていた。

医学部に関しては、医師免許を取るのに必要なので、それも別で考えて良い。

要は東大に入ることのメリットに関して言及している。

 

 

英語はスタディサプリを推奨しており、スマホを用いた勉強法を強く推奨している。

確かにスマホを駆使した勉強法は場所や時間、環境にとらわれず、いつでも質の高い勉強ができるので、私個人としてもおすすめしたいところである。

 仮に私が今高校生ならスタディサプリは非常に気になるところである。

非常に安いし、高価な予備校に通う必要もないだろうから、裕福な家庭とそうでない家庭の有利さは昔と比較したらなくなってきている印象である。

 

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など今は本当に安くていいものがなんでも試せるいい時代だと思います。