医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

健康の結論 堀江貴文 胃がん

ホリエモンこと、堀江貴文氏が都知事選に立候補というニュースが騒がれていますが、以前のホリエモンの執筆した書籍、健康の結論に関する記事を書きます。

この本は2年前の本であるが、すごく良い本なので解説していきたい。

 

この本はがんに関してかなりのページを割いている。

「はちみつが健康」「水素水が長寿の秘訣」など、いわゆる根拠の乏しい医療が流行っていて、患者さんの中でも真剣に信じている人が一定数いる。その理由としては、医学的知識がない状態だとすごくお手軽だから受け入れられやすい様だ。

本書はいずれも医師のインタビューや、それなりに正しいことをきちんと取材されている様なのでぼったくりの民間療法にハマって「ワカメが健康に良い」とか根拠の乏しいものを信じるより良いだろう。

 

本書の最大のメリットは医療従事者でない人でも、十分に噛み砕かれた説明がされていて、具体的にどうすれば良いのかが書かれている。

堀江氏は医者ではないので、胃がんや大腸がんに関しても独特の理解をされているが、いずれも臨床的に重要なポイントが抑えられており、具体的な実戦の仕方に正解が導かれている点はすごく感心した。

胃がんの原因の99%はピロリ菌」

実際にそこまでの具体的な報告があって99%かどうかは別にして、8割9割程度はピロリ菌が原因であることは消化器専門の医師なら誰でも知っていることだと思います。

しかもピロリ菌の感染は幼少期に親から感染したり、幼少期の井戸水などから感染すると言われていますが、ピロリ菌の感染はどんどん低下傾向であり、それに伴い日本でも胃がんの年齢調整死亡率は年々著しい減少傾向にあります。

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他にも胃がんとピロリ菌に関する本が多く出版されています。

 

日本の死亡原因の上位に位置する胃がんですが、ピロリ菌にさえ感染していなければ胃がんになるリスクはかなり減らすことができます。

しかも、ピロリ菌は感染していても薬を1週間内服するだけでピロリ菌を除菌できます。

ですので、ピロリ菌に自分が感染しているかどうかは確認しておくと良いと思います。

確認する検査の方法ですが、血液検査、呼気試験、便検査、胃カメラなどいろいろな方法があり、どの検査でもかなり高いクオリティーで診断できます。

 すでにピロリ菌に感染していても、除菌することで完全とは言えませんが、胃がんのリスクをかなり軽減できると考えられます。いまだに30歳代ぐらいでも3−4人に一人ぐらいはピロリ菌に感染しているのでぜひ感染しているかどうかは確認すると良いでしょう。

健康の結論には、ピロリ菌を根絶し、胃がんでなくなる人を減らすには中学生ぐらいで検査しておいて、感染していればその時に除菌しておくべきと書かれていますが、これは完全に同意したいです。

 

こういうことは知っているか、知らないかだけの問題なのでぜひピロリ菌を除菌して欲しい。

*1:人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編