医師の本棚

30代の男性医師。読んだ本の感想や医療情報、医学部受験のことを思うままに書きます。

神様のカルテ

著者:夏川草介

オススメ度:★★★★☆

読了時間:3時間

夏川草介

1978年、大阪府生まれ。

信州大学医学部卒業。医師として働く傍らで神様のカルテを書き上げた。

 

作品情報

 

神様のカルテは長野県の田舎を舞台にした作品。

おそらく、医師として働きながらの矛盾を感じており、その矛盾を小説として作品にしたものなのではないだろうか?と思っている。(完全に個人的な見解)

 

映画化もされており、主人公の医師は嵐の櫻井さんが演じている。

まさに小説のイメージ通りだと思う。

 

ちょうど10年以上前の、まだ「働き方改革」などという概念もない時代を描いた作品である。

2020年になった今読むと、当時の地域の一般内科のこんな働き方は悲惨だと感じる内容。

とにかく忙し過ぎるし、医師一人で患者の全ての責任を負う必要がある状況だったことが推察される。

田舎の数少ない一般内科(主人公の専門は消化器内科)での人間ドラマを描く。

 

まず読んでいて驚いたことは、非常に美しい文章であることだ。

医師であるので、本業は文章を書くことではないはずだが、これほど美しい文章を書けるなら、医師じゃなくて、小説家としてもやっていけるなと感じた。

情景描写が非常に美しいので、長野の景色が鮮明に想像できるし、読んでいて清々しい気分になる。

 

また、実際に地域医療に従事していないと、書けない内容だと感じる。

「24時間、365日対応」の医師が少ない一般病院だと、一般内科医はガチの救急当直はおそらく月に7、8回しないといけないだろう。

休みの日も急変の場合は、当番医ではなく主治医に連絡が入るシーンも描かれており、リアルな現状を描かれていたと考えられる。

そんな勤務をこなしながら、医療に対する疑問や主張をこの小説に込めたのかと感じた。

 

7、8年前に神様のカルテ1、2、3を読んだが、強いメッセージ性が感じられた。

読んだ頃は、まだ「働き方改革」なんて概念もない時代に発表されているが、2ではその時から痛烈に働き方に関する疑問を伝えている。

3では医学の不確実さ、最新の医学を学ぶことの大切さを感動とともに伝えている。

大学の医局制度は、昨今では疑問視されている節もあるが、本書では、最終は主人公が大学での診療に従事し、勉強することに決めた。

夏川草介氏は医師のキャリアの中では大学は一度は行くのが良いと考えている様に感じられた。

0は主人公の学生時代の話。

圧倒的なオススメ度は1、2、3が高い。

 

今夏川氏がどの様な働き方をしているかは不明であるが、今現在の医療に対してどの様な意見を持っているかを知りたい。

神様のカルテ4、として筆者の今の考えを小説に込めて欲しいと感じる。